『夜のピクニック』


 『夜のピクニック』(新潮文庫)/著者:恩田陸


歩行祭、などという歩くだけな行事自体に何の意義も見出せないモノグサ太郎でナマケモノなワタクシですが、これはまいりました。ただひたすら歩いているだけの小説が、なんでこんなにも心を揺さぶるんだろう。どうしてこれほどの感動を与えてくれるんだろう。読み進めていくだに惹き込まれてゆく感触。どーっと押し寄せてくる大波こそ無いものの、じわりじわりと少しずつ、浜辺の砂粒がさらわれていくように、心がもってかれてしまう。読了後に押し寄せてくる余韻に、そのままいつまでも浸っていたくなる。これはすごい。誰にでもオススメしたい名作ですね。この作品には、ゼヒともティーンエイジャーの時代に出会いたかった。できることなら高校生の時に読んでおきたかった。雑音には耳を塞がなければ生きていけない年齢になってしまったからこそか、それを強く思います。