『チルドレン』


 『チルドレン』(講談社文庫)/著者:伊坂幸太郎


これは面白い! これまで読んだ伊坂作品に個人的に感じていた“とっかかりの悪さ”というものがホトンド無く、読み始めてしまえば最後までスッと読めてしまいました。オビのアオリの『伊坂幸太郎、まずはコレ!』も、全く騙りではなかったですね。むしろ言い得て妙。確かに、伊坂幸太郎作品を初めて読むなら、コレがオススメかな。私としても、コレから入れば、そんな苦手意識はつかなかったのかな? とも思うしね。また、ガッツリ長編、ではなく、短編連作…というもの厳密に言えば違うかもしれないけど、とはいえ、そんなような形式がとられていたことも読みやすさの一要素だったのかもしれません。とにかく、収録された5つの短編すべてに共通して登場する陣内のキャラクターが、ものすごく際立ってて面白い。この物語の面白さは陣内だ、といっても、きっと過言じゃないと思う。ある意味、彼はこの小説の狂言回し、みたいな役どころなんでしょう。彼を中心として、その周囲にいる人間一人一人にスポットがあたっていく。彼らを主人公と見せかけて、その実、それらを陰ながらにして誘導しているのは陣内、みたいな。…こう書くと、陣内がよっぽど腹黒みたいだけど(^_^;) そして、短編を順番に読み進めていくうちに、1つ1つ、以前の話で呈示された小さな謎が解けていく、という構成も、my好みです。でも…ちょっとしたミステリ小説っぽくはなっているけど、それを考えると、あまりにも読めてしまう分かりやすい謎が多かったのが、ただ1つ、ちょっとガッカリな点かもしれないな。