『西の魔女が死んだ』


 『西の魔女が死んだ』(新潮文庫)/著者:梨木香歩


どうってことない当たり前にあるような田舎の日常の物語なのに、どうしてこんなにも心に響いてくるんだろう? どうしてこんなに懐かしくも感じるんだろう? そんな描写の中で、まいを想う西の魔女のあたたかい心が、なんの飾りもなく、ただ真っ直ぐに、読み手へストンと届けられてきた。そんな印象を受けました。巻末の初出で、そもそも児童文学だったらしい記載を見て、ああだからなのかと納得。だからこんなに分かりやすいんだ、だからたくさんの人を感動させることができるんだ、と。今の子供がうらやましいな。思春期の多感な頃にこの物語に巡り会えることは、たぶん、きっと、幸せなことだろうな…★