『背の眼』上下


  『背の眼』上下(幻冬舎文庫)/著者:道尾秀介


これは、いわば推理小説…になるんだろうけど、まずオカルトありき、の推理もの。そういうのは、わりと珍しいかもしれない。オカルトがらみ、というとやはり、京極夏彦著の某シリーズとカブってる? なんてことを思い浮かべたりもするのですが、実際に読んでみるとこの作品は、それとは一線を画している、というカンジを受けます。というのも、この作品では、霊、というものが確固として存在しているものであり、それを体験するのがワトソン役の道尾で、それを追い求めているのが、探偵役の真備、であるから。…こう言うと、なんか矛盾しているっぽいけどね(^.^;) 「霊などいない」という真相を暴く探偵は多いだろうけど、「霊に会いたい」というがために真相を求めていった結果事件を解決する、なんてスタンスの探偵は、あまり聞きませんよね。その設定からして興味深い。うえに、真備のキャラクターがまた理屈っぽくて面白い。理屈屋がいるゆえに冗長っぽさがあることは否めませんが、それでも読んでいくうちに惹き込まれてしまうのは確か。これがデビュー作ってことですが、それにしてはスゴイなー! これまで読んだ『向日葵の咲かない夏』や『片眼の猿』に比べれば、きっちり“本格ミステリ”って体裁なので、あの“裏切られたー!”って感は少ないカンジですが、それでも文句なく面白い作品、であると思います。霊現象に抵抗のない方はゼヒ! オススメです★


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