『死にぞこないの青』


 『死にぞこないの青』(幻冬舎コミックス漫画文庫)/著者:山本小鉄子、原作:乙一


映画『暗いところで待ち合わせ』を観て何となく乙一作品に興味を覚えたものの、『夏と花火と私の死体』を読んでイヤ〜な後味を覚えて以来、どうしても他の乙一作品に読書意欲がそそられなかったんですが。漫画だったらイケるかも? と、また、小野不由美著作『黒祠の島』の漫画化作品を読んで以来、山本小鉄子作品にも興味を覚えていた昨今、このひとの絵ならきっと読める! と何の根拠もなく思いこみ、こうやって文庫になったのを機に購入してみた次第。そうして実際に読んでみたら…確かに、意外にアッサリ読んでしまえました。やはり絵のイメージって大きいよね。助かる。…とはいっても、やはり原作色はキッチリあるらしく、特に表題作『死にぞこないの青』は、読中終始、えもいわれぬ気持ち悪さが常につきまとってて、読み終えた時は心底ホッとしました。子供にとって、周囲の大人の存在がいかに大きいか…それをイヤな形で眼前へつき付けてくる物語ですね。良くも悪しくもそれを考えさせずにはいられない面白さが、これにはあると思いました。ほか『暗いところで待ち合わせ』と『しあわせは子猫のかたち』があり、計3作品が収録されている1冊です。私個人的に、いちばん好きだなあ、って思ったのは『しあわせ〜』。よく考えるとこれはすごく理不尽な物語だけど、最終的には、切なさといとしさが入り混じった、あたたかな気持ちを味わうことができました。で、最も読了感が良かったのが『暗いところ〜』ですね。『そこが空いてますよ』ってセリフ、いいです。なんか好き★


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