『さよなら妖精』


 『さよなら妖精』(創元推理文庫)/著者:米澤穂信


読みながら、“こうならないで欲しいなあ…”と願っていた結末そのままを迎えてしまったので、読了感は、かなりやるせなかったです。でも、それに至るまでは、ある意味、米澤穂信作品らしい“日常の謎”が随所に織り込まれている作品、と言えるのではないかな? あくまでも“日常の謎”なので、その1つ1つをそこまで掘り下げられているわけでもなし、謎の解明というものでいえば、同著者の他シリーズ作品の方が面白いとは思いますが、これは、ユーゴスラビア人から見た日本の日常にある謎、って体裁がとられていて、これはこれでまた違った面白さが味わえるのではないでしょうか。日本人なら気にも留めないようなことでも、こうやって呈示されてみると、なるほどなあ…って感心させられます。異邦人の少女とちょっとした謎を交えた、日本の高校生の青春模様を描いた作品、と考えたら面白い作品です。また、この作品を通して、今まで全く知りもしなかったうえに興味すらなかったユーゴスラビアという“国”について、いくばくかの知識も得られましたしね。そういう意味では、ためになる作品、でもありました。この作品を通して、思春期特有のせつない想いを味わうというのは、いかがでしょうか? ――でも…やっぱ色々と後味悪い思いしか残らないかもなー…(-.-;)