『オーデュボンの祈り』


 『オーデュボンの祈り』(新潮文庫)/著者:伊坂幸太郎


あえて分類するとしたならば。…やっぱ“ファンタジー”の部類に入るのかな、これは? 現代日本を舞台にしているようでいて、現代日本から隔絶され閉鎖された離島を舞台にした、ちょっと日常にはありえない物語。でも、島の中で次々に人が殺され、散りばめられた謎がラストに至り氷解される、という内容は、“ミステリ”にも当てはまる。という、なんか掴みどころのない不思議な印象を受ける作品でした。でも、ちゃんとシッカリ面白く読めます。この非現実な設定も凝ってるし、また、その設定の中で散りばめられていた謎も、主人公の目の前で起こる事件と共に解決してくれるので、読了感もスッキリです。ラストに向けて張られた伏線が消化されていく過程も秀逸だと思う。でも…なんだろう? 上手く言えないけど、漠然とモヤモヤ感が残っているみたいな感じもあったりします。…ま、それは結局のとこ、荒唐無稽な設定の中で“自然”“当然”とされている、普通に考えたら非常識にすぎる超現実的事象に、読みながら“?”を覚えてしまったこと、それが読み終えてもそれが氷解されないことが、読後のモヤモヤになってしまったんでしょうね。異世界FTを読んで“なんで異世界やねん”とツッコミ入れるようなものですが。この作品の場合、ヘタに現代日本と繋がっている分、その設定の異質さが顕著に浮かびあがってきてしまっているのだと思います。それを“?”と思ってしまったら、もうこの作品は楽しめないですね。
知人から「伊坂幸太郎ちょー面白い!」「今いちばんハマってる」などと絶賛されたので、興味を覚え、まずコレから読んでみたのですが。それでちょっと期待しすぎてしまった感が、なくもないです(^_^;)