『幕末剣客伝』


 『幕末剣客伝』(双葉文庫)/著者:津本陽


タイトルにある「幕末」そして「剣客」という単語、また表紙絵にあるダンダラ模様の浅葱色羽織り、その2つに惹かれて思わず購入。――結果、その2つにとてつもなく騙されたような気がしてならない一冊…(-_-;) いや、決して面白くなかったワケではないんですけれども。けど当然、このタイトルと表紙絵から絶対、中身は“幕末の京都を舞台にした新撰組隊士が主人公の物語”だとか、思うじゃないですか。それが、よもやフタを開けてみれば、全くの別物だったなんで、誰も思いませんって! だって舞台は幕末どころか明治維新後、既に東京遷都も済んだ後で、よりにもよって静岡の浜松らへん。主人公は、確かに実在の新撰組隊士・中島登、ではありますが。もはや作中では既に“もと”と付く新撰組隊士。つーことで、これはまぎれもなく、中島登が新撰組隊士として活躍していた頃の物語、ではなく、“もと新撰組隊士”として維新後どのような生活を送ったかを描いた物語、でございました。…どこが「幕末」やねん! なんで表紙絵がダンダラ羽織りの剣客やねん! と、読了後に思わず洩らしてしまいましたヨ。…まあ、紹介文とかよく読まずにタイトルと表紙絵だけで判断してしまった私も私ですが。そんなワケなので、決して面白く読めなかったワケではなかったんですが、タイトルと内容の不一致、という大きな期待ハズレを食らってしまったので、あまり良い読了感を得られなかったことが残念でした。