『陽炎 稲妻 水の月』


 『陽炎 稲妻 水の月』(KCデラックス)/著者:飴あられ


4作品収録された短編集。吉原遊郭を舞台にしたものが3作、長崎を舞台にしたものが1作、すべて遊女が主人公。…そこからして、やはり結ばれることのない悲恋の物語だろうな、という予想に違わずの内容ではありましたが。とはいえ、逆にそれはそれで、当の本人たちは幸せなんだろうな、とも思える、幸せな恋物語にもなっているように感じます。そこまでグッとくるワケじゃないけど、やはりしんみり切なく哀しい気分にはなりますね。いずれにせよ、江戸時代の遊女の悲哀を描いた一冊、といえるんじゃないでしょうか。
長崎のものは、シーボルトとその妻・滝を主人公にしたもの…で、上手いこと結ばれるまでの物語だったから、厳密には悲恋とは言えないんではと思うけど。…でもゆくゆくはシーボルト帰国にともなって別れが待っているのだと思うと、やっぱりちょっと切なくなりますね。