『四畳半神話大系』


 『四畳半神話大系』(角川文庫)/著者:森見登美彦


この著者の作品は、どれを読んでも男汁が全開な物語ばかりで…(苦笑) これまで読んだ中で唯一の例外は『きつねのはなし』くらいですね。でも、そこがこの作者ならではの独特な面白みだと思う。それによる、うらぶれた風采の上がらないカンジの男のモノローグ、だけでも充分に面白いハズなのに、この物語は、その面白さにパラレルワールド展開が加わっていたりする。主人公が、過去の選択の分岐点で選んだ道に応じた異なる展開の物語が4つ。しかも、最終的には、それまでの物語での謎やら小さな疑問がスッキリ解るようになっている、という構造。…これが面白くないハズはない! 最後の最後まで読み切って、“なるほどなあ…”と唸らされてしまいました。それに加えて、主人公の周囲を固める脇役やら環境やらが、妙にアクが強すぎて、主人公が霞むくらいに楽しいったらないし。読み応え十分、心ゆくまで堪能させてもらいました。――うん、ここまで堪能すると、さすがに男汁に食傷気味ー? 同じ男汁モノローグ、確かにこの物語には必要不可欠なんだろうけど…個人的には、ぶっちゃけ4つもいりません…(-△-;)