『まほろ駅前多田便利軒』


 『まほろ駅前多田便利軒』(文春文庫)/著者:三浦しをん


お恥ずかしながら私にとって、これが初めての三浦しをん作品です。あちこちの読者レビューを見かけて、面白そうだなーと興味を覚えていた時、たまたま本屋で見かけたので何となく購入してみただけだったので、さほどの期待は無かったんですが。…それ、見事に裏切られましたね、良い意味で! 目次を見たとこ、短編連作で1冊の本になってるっぽかったので、とりあえず一話だけ…と読み始めたら止まらなくなって、結局、気付けば一冊一気読みでした。それくらい面白かった♪ まず、主人公2人をはじめとするキャラクターたちが魅力的。また、文章もサラッと軽いタッチで読み易い。後半へいくにつれ、主人公2人の抱える“過去”が明かされ、ストーリーに重くのしかかってくる感はあれど、しかし、それをさほど読み手に感じさせてないような気もします。文体、というより、主人公2人のキャラクターによるものが大きいのかも。読者を惹き付ける人物像だなあと、ホント思うです。性格や変人度合いに差はあれど、辛い過去を抱えている所為か主人公2人ともが人情に篤い性格であることは共通しているし、そんな彼等を通して語られているストーリーだからか、全体を通して終始ほのぼの〜とした人情味が漂ってるような風情があるんですよね。こういう雰囲気、ホントしみじみ好きだなあ〜って思えるです。これも、この主人公たちならでは、ってモノじゃないかな? だから、途中で彼等が別れて、また元サヤに戻ってくれた時は、心の底から良かった〜とホッとしました。この1冊だけじゃ足りない、このコンビの物語をもっと読みたい、って、読了後、切に思いましたね。そいでもって、読んだことない他の三浦しをん作品にも、じわじわ興味が出てきました。機会があれば別作も読んでみたいです。