『向日葵の咲かない夏』


 『向日葵の咲かない夏』(新潮文庫)/著者:道尾秀介


これは、かかってたオビに、2009年版の「このミス」第一位、というアオリがあったので、ただ興味を覚えて何の前情報もなく購入したもの。なので、購入した時点では、この著者の名前すら知りませんでしたし、もちろん作品を読んだこともありませんでした。しかし結果としては…確かに、〈看板に偽りナシ〉というところでしょうか。やはり“第一位”となるほど支持を受けた作品だけあって、本当に面白い作品。だとは思う。でも、万人にオススメしたいか? と言われれば、それは決して肯定の返事を返せない。面白い、のは確か。でも、その面白さは、間違いなく人による。読み手に応じて、いくらでも評価が分かれる。…というものじゃないかな。
少なくとも私は、決して清々しい読了感は得られませんでした。平たく言えば「好きな話じゃない」のヒトコトに尽きます。これを、なんといえばいいのか…強いて言うなれば、自分が見たくなくて必死に目を逸らしているものを、まさにすぐ眼前に突きつけられたかのような? そんな不快感と変に腑に落ちた感がないまぜになった、みたいなカンジ? …ホント、こんな結末で終わってほしくなかった。後味悪い。
しかし、それでも確かに、この作品は“面白い”と思えます。文章力、物語の構成力、そういった“作り”の部分において、この作品はズバ抜けているんじゃないでしょうか。引っ張られて引っ張られて、読み手を物語の世界に引き込むだけ引き込んでから、最後にぱっと手のひらを返して、まるで裏切りの如く真実を突きつける。その手腕こそ、この作者の力量、というものですよね。
そんな、一筋縄ではいかない魅力で惹き付けてくる作品、なので。…だから、面白いとは思うけど万人にはオススメできない感じになるんですよね。しかし逆に、オススメして、この言い表わせないモヤモヤとした気持ちを他の人も感じてみやがれ、って気があったりもするけど。
…ま、読むか読まないかは、どうぞ自己責任でお願いします★(^_^;)