『ラッシュライフ』


 『ラッシュライフ』(新潮文庫)/著者:伊坂幸太郎


そっか…伊坂幸太郎作品は時間ある時に一気読みしないと充分に面白さが味わえないんだな…。――ということを、読了2冊目にして早々と覚りました(^_^;) きっと私だけかもしれないんですが、前作『オーデュボン〜』にしろ、この作品にしろ、どうも読み始めの取っ掛かりが悪くって。上手く作品の世界に入り込めないといいますか。敷居が高いって思ってたりするのかな? とにかく、どうも読む気をそそられないのですよね。それで、前作もコレも、一度読み止めたらズルズルと後回しになっていっちゃって…というパターンだったんです。でも、一度えいっとばかりに腹くくって最後まで一気に読めば、すごく面白いんですよ。途中からジワジワと面白みが増してくる。最初の取っ掛かりの悪さで諦めなくてよかったー! っていう達成感までも味わえます。
そして、この『ラッシュライフ』は、それが味わえる最たるものだと思います。
この物語は、いわば群像劇ですね。複数の人間の視点で、複数の物語が綴られていて、一見すると各々の物語は何のつながりもないように感じられるのに、ラストへと向けて1つの大きな物語に集束されていく、という作りになっています。その手腕が実に鮮やか。これぞ作者の力量、ってもんなんでしょう。読み進めていく過程で、個々の物語が次第にリンクしていくのが分かるにつれ、だんだんと興奮も増していきます。それがラストを迎えて、すべての繋がりが見えたことにより迎える、あの結末の小気味よさ。…これはホント秀逸ですよね。
これは、『オーデュボン〜』のように、カカシが喋るのがアタリマエ、みたいなファンタジック要素は一切無かったので、普通の現代モノ、良く出来たミステリとして、素直に楽しむことが出来ました。この作品を読んで良かった。前以上に伊坂幸太郎作品を読むのが楽しみになりました★